牛を飼おうか迷っているの。 いいな。収入も安定するし。 でも、放牧とかのことを考えると、不安で。 ベルを譲ってもらう話があったのだけど、私は鳴っているかどうか分からないから。 犬を飼ったらいいんじゃないか?よくしつけたら、放牧を手伝ってくれるし。 なるほど、いいね。さすがキリク。 俺のところで気に入ったやつを選んでくれたらいいよ。明日にでも、見にこいよ。 うん、そうする。ありがとうキリク。 チセの言葉は、すって目に入ってくる。溶け込んでくる。 居心地がいい言葉たちだな。どう表現したらいいかわからないけれど。 声をね、聞けない分、私はその人の表情と瞳と、 文字の形を見ながら会話したり、その人のことを考えたりするの。 そっか。なるほどな。 キリクが考えてることはね、馬たちのことばかりでしょ? やっぱ、わかるんだ? 言葉の表情でね。キリクはわかりやすいから。 すごいな。 でも、きっと、キリクが馬たちに話しかけたり、体調とかを読み取ったりするのと、そんなに変わりがないと思うの。 鶏を飼い始めたばかりの私には、寧ろその掴み方を教えてほしいかも。 チセにはもうわかってると思うな。 そう? 変わらないよ。あとはどれだけ愛情を注げるかだから。 なんだか、キリクが言うと説得力があるね。 お酒を飲むのって久しぶりかも。 チセ、すぐに赤くなるんだな。 だって、そんなに飲む機会なかったから。キリクはお酒強いね。 まあな。チセの文字、少し歪んできたぞ。 え、そうかなあ? やっぱり、相当酔ってるな。 キリクはいつも、ハヤテのことをかならず話してくれるね。 ああ、俺にとってハヤテは一番長く一緒にいる家族だからな。 そっか。いいね、そういうの。 今度ハヤテに会ってくれるか?きっと、ハヤテもチセのことを気に入るだろうから。 ふふ、ありがとう。キリクが言うように、気に入ってもらえたらいいんだけど。 今日はね、たくさん釣れたの。 ほんとだ、大した釣り名人だな。 ここの山は本当に、見ていて飽きないから、気付いたらいつの間にか長い時間、釣り場に座っちゃってて、 釣りよりも、景色を見ることの方が目的だったかも。 じゃあ、なおさら、一石二鳥でラッキーじゃん。 うん。今日の晩ごはんは魚料理なんだけど、食べてく? じゃあ、遠慮なく。 魚、焦げちゃったね。 でも、これはこれでおいしいよ。 ほんと? チセは釣り名人だけど、料理はこれからだな。 あー、一言多いなあ。 今日はもうこのページで終わりだわ。 あっという間だな。 新しいメモ帳は、明日持ってくるよ。 ありがとう。もう6冊めね。 どんどん文字が埋まっていく。俺こんなに文字をたくさん書き続けてるのは初めてだよ。 チセのおかげだな。 ううん。私は、キリクのおかげでこんなに文字を生み出すことができるの。 本当に、うれしい。ありがとう。 |