キリク*女主








「だってキリクだって、」


口を彼の大きな手でふさがれる。

あったかくて、彼はそんな気はないのだろうけれど、彼の手が私の唇に触れている。


それだけで、胸がひっくりかえってしまいそうだった。




今だけ私の唇が、マシュマロのように柔らかくなってくれたら、

彼の手の中に柔らかな感触を、いつまでも残しておけるのに。

そんな少し変態くさいことまで思ってしまう。

私の思考は、完全にストップする。



「だってじゃないだろ。俺の勝ーち!」


じゃんけんをする。ただそれだけ。簡単なゲーム。

三回勝った方が今日のデート先を決めるという単純なもの。


私がちょっと遅出しをしたら、キリクはずるだと言ってきた。

キリクだって、二回目にちょっと遅かったくせに。



一勝二敗の危機の中で、ちょっとリズムが遅れただけなのに。



私が今日デート場所にあげていた山の散策は、簡単に却下され、

橋の上でゆっくりした後、ご飯を食べに行くことになった。


負けた悔しさをちょっと胸に残しながら、

キリクの家のドアを開けようとする前に、キリクに肩をとんとんと叩かれた。



「なあに?」


そう言って振り向いたら、両頬を指でくいっとつままれた。



「にゃに?」


「ずるした罰ゲーム」


笑いながらキリクは、私の頬をぐいぐいひっぱって、


「まるかいて、ちょん。」



「もーキリク!」


ちょっと痛かった。

キリクの指があった跡をさすりながら、キリクに抗議した。


キリクは笑いながら、私の頭をぽんぽんとする。

キリクの大きな手から伝わる熱が、私の髪の毛を通して頭の皮膚にびりびりと伝わってくる。

くやしいけど、すっごくドキドキする。



「チセの頬、やわらかいな。」



「・・・そ、そんなことないよ。」


「そうか?よし、デート行くか。」


「う、うん。」



キリクの言葉とか行動とか、

一瞬にして私の思考をストップさせる魔法を持っている。

全然慣れない。むしろ魔法の力は、増していくばかり。





あーもう!

さっきまで怒ってたはずなのに!




結局私は、キリクにはかなわないのだ。












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